疾患別リハビリテーション~認知症~

2020年04月21日

1.認知症とは?

 全体像としては『脳の病変により、記憶や理解、判断といった複数の認知機能が後天的に低下し、日常生活に支障をきたすようになった状態』と言えます。また、認知症は単一の疾患名ではなく、多様な原因で一定範囲の症状(記憶・思考・判断・注意)が引き起こされる症候群として位置づけられます。

 2.原因は?   

 認知症には原因となる疾患があり、主なものとしてアルツハイマー病や脳梗塞など脳血管障害から引き起こす脳血管性認知症があります。

3.症状は?   

 主に記憶の障害(特に新しく覚えることが困難になる記銘障害)、失見当識(時間や人、場所がわからない)や考えたり、判断すること、物事に注意を向けることの障害があります。

4.リハビリテーションアプローチ  

*脳活性化リハビリテーション  

 認知症は神経ネットワークが崩壊していく病気です。しかし、脳には可塑性(神経ネットワークが作られていくこと)があり、認知症に対しては、脳を活性化していくことによって進行スピードを緩め、場合によっては進行を食い止めたり、症状が軽くなる可能性があります。「崩壊>回復」のバランス状態から、「崩壊<回復」のバランス状態に変えようというのが脳活性化リハビリテーションです。  

 

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図1 廃用を減らし、脳活性化を増やして、認知症改善のバランスへ(文献1より引用) 

具体的なポイント・原則としては以下のことが挙げられます。

 

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*具体的方法の例

① 回想法・作業回想法

② 現実見当識訓練

③ ゲーム

④ 音読や計算などの学習

⑤ アートセラピー

⑥ 趣味活動

⑦ 運動      ...etc

一例として作業回想法(例:わらじ作り)を紹介したいと思います

 【作業回想法】

 従来の回想法(昔の出来事を思い出してもらい語っていただくことによって脳活性化する)に古い生活道具などを使う作業を組み合わせることで、認知症の方の「回想」を促すとともに、「作業」を通じて残存機能である手続き記憶(体で覚えている記憶)を引き出すことによって、QOL(生活の質)の向上を図る手法です。具体的な手順を例示します

例)わらじ作り 事前に職業歴・生活歴・趣味などから馴染みの作業内容(この場合はわらじ作り)を選択するninnchi22.jpg

① わらじ作りの機会を設ける

② あいさつをし、趣旨を伝える

③ 用意しておいた道具・材料の名前と使い方を尋ねる

④ 今回のテーマを伝える

⑤ 「やり方を教えてください」と実演(お手本) を促し、待つ

⑥ 一人一人に実演してもらう

⑦ スタッフ自らもやってみせ、アドバイスを受ける

⑧ 作業や道具にまつわる経験談や思い出を話してもらう

⑨ 感想を尋ねる

⑩ スタッフの感想と感謝の気持ちを伝える

⑪ 次回の予定確認を行い終了する

* 作業回想法は作業を通じて認知症の方自身の認知機能や精神機能を高める直接的効果や家族・スタッフとの関係を再構築する間接的な効果も持ち合わせているといえます

参考及び引用文献(引用は一部改変):

1)山口晴保:「認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント」協同医書出版社 p118.p122~p125.p144~p147.p168~p170