脳卒中&日常生活動作のポイント⑨

2020年04月21日

 

第9章           立ち上がり、移乗について

 

  • はじめに

前回の「寝返り、起き上がり」に引き続き、今回は基本動作の中の「立ち上がり、移乗」について取り上げます。脳卒中の患者様の場合、ベッドから離れられないとなれば、食事や排泄など全てベッドの上ですませることとなります。そのため、立ち上がれるかどうかは、とても重要な問題となります。

 

  • 立ち上がり

立ち上がるためのポイントとして、座っている状態から、 ・足を引くことができる(膝よりも足部を後ろに引く)・前かがみになれる・座面の高さの3点が挙げられます。足部を引く、前かがみになるという動作は、脚に力を入れやすくするために必要な動作です。座面の高さは低すぎると立ち上がる時に負担が大きいし、高すぎると足が床につきにくくなります。

①     端座位の姿勢をとる。

②     非麻痺側上肢でベッドを押し、ベッドの端に浅く腰掛けます。

③     非麻痺側下肢の膝を曲げ、足部を後ろに移動させ、上体を前傾させます。(図1)

④     非麻痺側下肢に力を入れベッドを押して立ち上がる。このとき、麻痺側の回復度合いに応じて、麻痺側も同様に足部を後ろに移動させ、麻痺側にも力を入れる。初期ではベッド柵を持って立ち上がります。

⑤     介助方法は、介助者が患者様の前方に立ち、患者様の腰を持ち、自分の膝で患者様の麻痺側の膝あるいは両膝を前方で支え、膝折れを防止します。患者様の状態に合わせて介助量を加減します。

(図2)

図1、図2は左片麻痺の状態

 

 

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図1

 

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図2

 

 

 

 

  • 移乗

基本的には、移動する側に非麻痺側がくるようにし、車椅子は動かないようにブレーキをかけます。介助の注意点として、1つは患者様の麻痺側の膝折れと麻痺側足部の滑り出しの防止、もう1つは立ち上がり時に介護者が腰を落とし、患者様を前傾させ、重心を足部に移動させることです。ベッド柵につかまっての立ち上がりがしにくい時は、介助Barを使用して立ち上がりを行います。麻痺側下肢の回復の度合いによっては、麻痺側にある車椅子に移乗を行うこともあります。

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上図は右片麻痺の状態

 

参考・引用文献

1)鶴見隆生 (編):日常生活活動学・生活環境学.医学書院,2004.

2)太田仁史ほか:完全図解 新しい介護,講談社,2004.