脳卒中&日常生活動作のポイント⑩

2020年04月21日

第10章 床からの立ち上がり

 ●はじめに

 普段自宅外ではあまり必要としない動作ですが、自宅で生活するとなると、床に座ってくつろぎたいという希望を持つ人は多いと思います。日本の習慣的なものでもあり、また、コタツを利用したいという方も少ないと思います。 

● 床からの立ち上がり(右片麻痺)

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①非麻痺側の手を前方についた膝立ち位になります。

 

 

 

 

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②麻痺側下肢を前に出し、片膝立ちになります。麻痺側下肢、非麻痺側膝と手で直角三角形になるように配置し、安定させます。(横座りから麻痺側下肢の膝を立て片膝立ちになるという方法もあります。) 

 

 

 

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③非麻痺側の足趾を立て、麻痺側下肢と非麻痺側上肢に体重を移動させます。

 

 

 

 

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④非麻痺側膝を徐々に伸ばしていき、体重を非麻痺側下肢に移動させ、腰を持ち上げます。

 

 

 

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⑤非麻痺側の手は、立ち上がりの完了する直前まで床についておき、ゆっくりと手を離します。最後に、麻痺側下肢を非麻痺側下肢に引き寄せます。

 

 

 

 

 

 

● 麻痺側膝の支持性が不良な場合(右片麻痺)

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①非麻痺側の手を斜め後方につき、非麻痺側下肢は膝を曲げます。

 

 

 

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②非麻痺側の手に体重を移動させ、非麻痺側の膝をつき腰を持ち上げます。そのあと、非麻痺側の手を前に出し、麻痺側下肢、非麻痺側の膝と手で三角形を作り安定させます。

 

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③非麻痺側の足趾を立ててから、非麻痺側上肢に体重を移動させ、非麻痺側膝を徐々に伸ばしていき、体重を非麻痺側下肢に移動させて腰を持ち上げます。   

 

 

 

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④立ち上がった後に、麻痺側下肢を非麻痺側下肢に引き寄せます。

 

 

 

 

● 介助方法

 最初は台や椅子などを利用して、非麻痺側上肢を台の上に置くと立ち上がりやすくなります。介助者は麻痺側後方に立ち、片手で腰を持ち、もう片手は麻痺側前胸部を支え、麻痺側からの崩れを防ぎます。腰を持つ手では、まずは引っ張りあげることはせず、支えるだけにし、転倒の危険がある時に介助するようにし、自主性を促すようにしてください。また、麻痺側下肢を前に出した片膝立ち位では、麻痺側下肢がふらつくことがあるので、介助により支える必要があるときもあります。

● 立位から床へ座る

  1. 立位から徐々に前かがみになり、前方に手をつく。
  2. 静かに非麻痺側の膝をつき、片膝立ちなる。
  3. 腰を回して、殿部を床につける。 床から立ち上がる動作で、どうしても一人で行いたいという方、介助量がとても多いという方には、昇降座椅子の利用も検討してみてもよいと思います。

●参考・引用文献

1)鶴見隆生 (編):日常生活活動学・生活環境学.医学書院,2004.

2)太田仁史ほか:完全図解 新しい介護,講談社,2004.

3)伊藤利之,鎌倉矩子編:ADLとその周辺―評価・指導・介護の実際―第1版.医学書院,2004.

4) 潮見泰蔵:脳卒中理学療法テキスト第1版.有限会社アイペック,2002.